蒼夏の螺旋

   “ビートはお好き?”
 


昔のお寝坊さんだったころが想像出来ぬほど、
いやさ、あの頃のあの寝ぼすけ坊やが
こうまで朝起きの働き者になろうと誰が思おうか
という順番が正しいものか。

 「えっと…。」

ご亭主が定時出勤の朝は、
6時には起き出して炊飯器のスイッチを確かめ、
顔を洗いに向かったサニタリで、
洗濯機へ洗い物をほうり込むと洗剤をセットしてスイッチオン。
それから、旦那がジョギングなどで先に起きていればいいが、
そうでない朝は一階まで新聞を取りに行き。
それからそれから、
冷蔵庫を開けると、おみそ汁の段取りを考えつつ、
卵はどうしよっかな、
みそ汁に落としてポーチドエッグ風ってのも美味しいな。
納豆とそれから、
あ・ゆうべの肉ジャガ美味そうになってるvv…なぞと、
愛しい食材に挨拶しつつ(笑)、朝ご飯の支度へと取り掛かる。

  …のは いいとして

時々、それは小刻みに肩やら首やらを振っていることがあり。
どうやらインナフォンで音楽を聴いているらしいのだが、

 「一体どんだけリズムの早いのを聴いとるんだ。」
 「え? あ、ゾロおはよーvv」

貧乏揺すりか、それとも
新手の何か新興宗教か…いやいや それはないかと。
ちょっと考えてしまったほど、
実は旦那様、あんまり今時の音楽には通じてないようで。

 「今日は ばさらの主題歌集だよんvv」

ほらほらとイヤホンの片方を渡され、
???と思いつつ耳へ当てれば、
成程 結構な早さで切れのいい曲が弾けており、
オゥッとかホォッとかいう
威勢のいいコーラスが節々に入っているのがまた、
軽快なノリにつながっていて心地いい…らしいのだが。

 「あとね、ふりっぷさいどとかも聴いてる。」

ちょっと前はユーロビートばっか聴いてたけど、
最近はバラードも聴くよ?とご機嫌そうなルフィ奥様。
幅の広い横縞の大きめTシャツに、
薄手のフリース生地のイージーパンツ。
細っこい腕脚なのが、
ともすれば十代の女の子のようでもあるが、
にっかーと微笑った笑顔はちょいとがさつで、

 「ゾロも
  スマホとかへ
  何かダウンロードしてりゃあいいのに。」

 「聴く暇がねぇよ。」

ほれとイアホンを返せば、
話し相手が起きて来たのでと、
ルフィもスイッチを落としてしまい、
スマホはテーブルの上で沈黙するが、
その分、もっと楽しい声と会話が弾む。

 「あんなあんな?」
 「おお。」
 「ばさらってのはゲームなんだけどな。」
 「うん。」
 「ゾロの声とよく似た声優さんが
  主役の声をあててんだぜ?」
 「そんなん俺がいりゃあ十分だろが。」
 「おおお、自分で言うかな、それ。」
 「どんな名台詞があんだ?」
 「んと、奥州筆頭、伊達政宗っ推して参るっ!」
 「おーし、じゃあ今日から“ただいま”は それな。」
 「え〜。(爆笑) でも、覚えてられるか?」
 「お、馬鹿にすんなよな。」
 「だってさ、
  昨日 頼んだ買い物、忘れて帰って来たじゃん。」
 「あれは、う〜んとだな。お、肉ジャガ美味そー。」
 「あ、誤魔化したなー。」



 早起きも木枯らしもへいちゃら、
 だって大好きなキミがいるから……






  〜Fine〜  13.11.14.


  *いやはや、お寒うございますな。
   去年の手術跡が痛いったらありゃしない。
   若くないんだなぁというの、こういう形で知りたくないっての。
   とりあえず、皆様 風邪ひかないようにね。


**ご感想はこちらvv*めるふぉvv

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